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名古屋高等裁判所 昭和46年(ネ)136号 判決 1973年10月15日

控訴人

株式会社帝国興信所

右代表者

後藤義夫

右訴訟代理

馬塲東作

外一名

被控訴人

吉田礼子

右訴訟代理

大脇雅子

外四名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一当裁判所もまた、被控訴人の本訴請求は認容すべきものと判断する。その理由は、次に付加訂正するほか原判決理由において説示するところと同じであるからここにこれを引用する。

(編注、以下本判決で付加訂正後の原判決理由を掲げる)

理由

一原告主張第二の一の(一)ないし(三)の各事実(編注、この部分は末尾に掲記した)(但し、(二)の事実中、原告主張の各生理休暇日が、生理日で就業が著しく困難なためとある点を除く。)及び本件各賃金カットの当時効力を有していた控訴会社の就業規則第四〇条五号の有給生理休暇の規定文言は原告主張のとおりであること、原告主張のとおりの労働協約が原告の属する旧組合との間に存在していたが、その主張の日時に失効したことは当事者間に争いがなく<証拠>によれば、原告主張の各生理休暇日は、いずれも原告において生理日で就業が著しく困難であつたためであることが認められる。

二ところで控訴会社の前記就業規則中、有給生理休暇につき規定している前記条項は、その計算単位が一生理周期か一賃金計算期間かについて明記されていない。

そこで、先ず右就業規則条項の計算単位は、右のいずれに解すべきかについて考察する。

就業規則は、通常労働協約の内容となつて労働者の労働条件を統一的かつ画一的に規律する作用を営むものである。就業規則の右のような機能にかんがみると、その条項の解釈は、何よりも先ず表示された条項の文言に従つてその意味内容を合理的に把握し、かつ労使特にその条項の利用が予定されている労働者一般の合理的意思に適合するように解釈すべきである。

しかし、もし労使間に右条項の解釈について、明示若しくは黙示の合意(被告主張の統一的解釈)が定立されていると認められる事情が存するときは、労使の具体的意思の合致あるものとして、これを尊重して解釈をなすべきである。

よつて以下、右の見地に立つて考察を進める。

三(一) 就業規則の文言上からの考察

1  <証拠>によれば、本件賃金カットの当時効力を有していた控訴会社就業規則中の有給生理休暇の規定は、原告主張のとおり慶弔、罹災、隔離、産前産後の各休暇と並列して同一条文に特別休暇の一種として規定されていることが認められる。右慶弔、罹災等の各休暇は、その性質上、一賃金計算期間を計算単位とすることになじまないことは明らかであり、有給生理休暇がこれらの休暇と並列して同一条文に規定されていることから考えると、就業規則の文言上は一生理周期を単位として一生理期ごとに一日を与える趣旨に解するのが相当である。

(なお、<証拠>によれば、右有給生理休暇条項の沿革は、昭和二三年三月一日施行の被告の所則第二章第一九条に同趣旨の規定が存し、これが昭和二九年五月制定の就業規則第三八条五号に特別休暇として規定され、右第三八条と全く同一の文言体裁が前記賃金カット当時の就業規則第四〇条に引継がれたことが認められる。)

なお被告の昭和四二年二月改正施行した給与規則第七条に、「就業規則に定める休暇は、すべて有給とする。ただし一日をこえる生理休暇はこの限りではない」旨の記載の存することは、当事者間に争がない。しかし、右給与規則第七条の文言自体から考えて、同条が有給生理休暇を一賃金計算期間に一日と限定したものとは解せられない。(<証拠>によれば、右改正給与規則第一二、一三条に「用欠」については、その計算単位を一賃金計算期間と明記していることが認められる。)

また、<証拠>によれば、控訴会社の昭和四六年度就業規則は第四章年次休暇、特別休暇として一賃金計算期間内に一日の有給生理休暇のほかにこれをこえる日数につき無給の生理休暇を認めているが、右就業規則の改訂には後記のような事情が存するのでこれをもつて直ちに本件賃金カット当時の就業規則の文言の解釈の参考とすることはできない。

2、<証拠>によれば被控訴人主張の旧組合と控訴会社の労働協約第五七条には、産前産後の休暇と並列して当時の就業規則所定の文言と全く同一の文言で有給生理休暇が規定され、第五八条には慶弔、罹災、隔離の各休暇が規定されていることが認められる。

従つて、右協約第五七条も、その文言上からすれば、一生理周期を単位として一生理期ごとに一日を与える趣旨に解するのが相当である。

((なお、<証拠>によれば、右協約第五七条は、昭和三二年に旧組合の前身である帝国興信所東海地区従業員組合名古屋支部と被告との間に結ばれた労働協約第四五条をそのまま引継いだものであることが認められる。))

(二) 婦人労働者の生理の実態からの考察

<証拠>によれば、次の事実が認められる。

生理周期は、生理第一日から次の生理異の前日までの日数を言い、右日数は年令によつて異るとともに、個人差があり、また、生理周期が変動する幅は三〇日を中心に前後一週間である。

我が国の婦人の平均生理周期は、初潮期、成熟期、閉経期へと移行する間に、二八、二九日前後、三〇、三一日前後、二八、二九日前後へと移行する。成熟期の婦人は三〇日前後が最も多いが、個人の具体的生理周期は、生活環境、労働条件など、精神的、肉体的条件によつて影響され、毎期多少の変動を生ずる。

従つて二九日以内の生理周期の婦人は、規則的に生理周期をくり返えしたとしても、一カ月二回生理が到来することも起りうるし、三〇日以上の生理周期の婦人でも何らかの変調を来たしたときは、同様の結果を招来することもありうる。

現に被告の女子従業員中原告を含む七名のうち、三名は昭和四三年度の一年間に各一回、一カ月二回の生理期を迎えている。

以上の事実が認められる。

右認定の事実によれば、女子の生理周期は、必ずしも一賃金計算単位である一八日から翌月一九日までの一カ月に符合していないことは明白である。

従つて、右のような婦人労働者の生理の実態に即して考えると、前記就業規則条項は、一生理周期を単位として一生理期ごとに一日の趣旨を規定したものと解すべきである。

(三) これを要するに、右就業規則条項の計算単位は、一生理周期であると解するのが、文理解釈上も、婦人労働者の生理の特質上も妥当であり、ひいて労使特に婦人労働者一般の合理的意思に適合するというべきである。

四被告は、右就業規則条項の計算単位は、一賃金計算期間であるとする労使の統一的解釈が定立しており、このことは右解釈に則つた取り扱いが労使慣行として確立している事実から明らかである旨主張する。

しかしながら、被告の全立証を以とするも、被告の右主張を肯認するに足りない。

以下これを詳述する。

(一)  <証拠>によれば次の事実が認められる。

1  昭和三〇年東京本所(現在の本社の前身)において、当時の帝国興信所本所従業員組合より有給生理休暇を一生理期間につき二日とする旨の要求がなされ、同年七月二一日被告は同組合に対し「生理休暇は現状を以て格別の支障のなきものと認める。従つて生理休暇の増日数は容認しえない。」旨の通告をしたが、生理休暇の計算単位については何らの見解も示さなかつた。

2  昭和三一年一一月の被告と同組合との間の労働協約改訂交渉にあたり、組合は生理休暇の条項を二日とする案を出し、被告は一日とする案を出したが、右両案共に、計算単位についての文言は何ら存在せず、この点について被告から何らの説明もされなかつた。

3、昭和三一年一月二七日被告名古屋支店の前身である名古屋支所における最初の労働組合として帝国興信所名古屋支所従業員組合が結成され、右組合は被告と直ちに団体交渉をなした。当時同支所の実状は無給の生理休暇さえ仲々とりにくい状況であつたため「生理休暇を完全に実施せよ」との要求が組合からなされた、支所長との間で右要求を含む諸項目について協定書が作成されたが、支所長から生理休暇の計算単位については何らの説明もされなかつた。

4  昭和三二年被告と当時の帝国興信所東海地区従業員組合名古屋支部(旧組合の前身)との間の前記労働協約締結における団体交渉では、ユニオンショップ及び争議条項がその中心的争点となり、有給生理休暇については、組合が二日を要求したのに対し、被告は一日しか認めず、結局一日とする協約が成立した。

しかし右一日の計算単位を一賃金計算期間に限定する旨の主張、説明が被告からなされたことは全くなかつた。

5  昭和三七年に被告と旧組合との間で締結された前記労働協約締結の際の労使交渉も、同様に、有給生理休暇の単位は一賃金計算期間に限定する旨の主張、説明が被告がらなされたことはなかつた。

6  前記昭和四二年二月改正施行の給与規則制定の際においても、被告から右のような主張も説明もなかつた。

以上の事実が認められ、<証拠判断省略>

(二)  以上認定の事実によれば、被告と原告の所属する旧組合ないしその前身労組との間に、就業規則ないし労働協約の前記各条項にいう有給生理休暇一日とは一賃金計算期間を単位とする旨の労使の統一的解釈が明示的に存在したと認めることは困難である。

(三)  もつとも、労使の統一的解釈、別言すれば解釈についての合意は黙示的になされる場合もあり得るから、もし被告主張のような慣行が存するとすれば、右のような慣行の存在するという事実自体から、労使間に統一的解釈が成立していると認める余地が生ずるわけである。

よつて、以下右のような慣行の存否について判断する。

(四)<証拠>を総合すれば次の事実が認められる。

1  被告本社においては、右出勤簿の毎月の区切りが、賃金計算期間である一九日から翌月一八日までとなつたのは昭和四四年春からであつて、それより以前、出勤簿が一日から月末までの暦どおりの区切りで作成されていた時代においては、出勤簿上毎月一回の生理休暇をとつていれば、一賃金計算期間を単位とすれば二回の生理休暇の計算になつていても、有給扱いとされていた形跡が存する。

2  被告において、昭和四一年一月から昭和四三年九月までの間に、一賃金計算期間中生理期ごとに一日計二日の有給生理休暇として取扱つた事例として現在判明しているものは、大阪支社において四名による五件(延五名)、岐阜支店において二名による三件(延三名)、京都、神戸の各支店において各一名各一件である。

3  被告名古屋支店においては昭和四三年四月以降右のような事例は皆無であつた。原告は昭和四三年六月一七日に生理休暇届を提出したところ、同月一九日総務部長は原告に対し「五月二一日も有給生理休暇をとつているので、一カ月に二回となるから六月一八日については年次有給休暇に振り替えよ」と指示したが、原告はこれに納得せず、旧組合名古屋支部の職場委員会にはかり、同日、職場委員は、総務部長の右取扱いに対し抗議をした。

右抗議に対し総務部長は個人的見解として「右休暇は、休暇分の賃金カットはされていないが、精勤手当が削られる被告会社の『A用欠』扱いになるかもしれない」旨発言したが、その後本社からの指示により同月二五日支給の原告の給与は、右休暇分の賃金がカットされた。

以上の事実が認められ、<証拠判断省略>

4  右認定の事実によれば、イ、被告の事業所の中には、一賃金計算期間内に生理期ごとに各一日計二日の有給生理休暇を付与していた事例が存する。ロ、被告本社において一賃金計算期間中、有給生理休暇一日の取扱に正確に統一されるようになつたのは昭和四四年春以降と推認される。ハ、名古屋支店においては原告のした本件第一回の有給生理休暇届が提出されるまで一賃金計算期間中一日をこえる分の有給生理休暇届につき、賃金カットするか、どうかその取扱は明確になつていなかつた。

右イロハの各事実によれば、被告の本支店及び各事業所において、有給生理休暇は一賃金計算期間を単位として一日である旨の統一的取扱いが長期間継続してなされていたと認めることは困難である。

被告は右イの事例は、すべて、労務管理上の手落ちから、一日をこえる有給生理休暇の請求であることを看過したためである、と主張するけれども、右のような請求であることを管理者が認識していながら、賃金カットしなかつた事例も存することは<証拠>により認められるから、被告の右主張は採用できない。

もつとも、名古屋支店においては、イのような事例が昭和四三年四月以降全く存しないことは、先に認定したとおりである。

しかしながら、このことから直ちに、昭和四三年三月以前においても同様にイの事例が存しないと即断することは早計である。(<証拠>によれば、右イの事例は克明に調べれば各事業所に更に発見される可能性のあることが認められる。)

また名古屋支店において、昭和四三年四月以降イの事例が存しないのは、このような請求自体が一度もなされなかつたために外ならない。(このような請求が右日時以降原告以外の者からなされたと認めるべき資料は存しない。)

右のように昭和四三年四月以降一日をこえる有給生理休暇の請求が、殆んどなされた形跡が存しないということから、直ちに、被告主張のような慣行の成立を、名古屋支店に認めることができるであろうか。

当裁判所は、名古屋支店において、従前このような請求は認めないという方針を女子従業員に示達していた形跡が何ら存しないことに徴すれば、請求した事例が最近において存しないということから、直ちに労使慣行の成立を即断することはできないと考える。

元来一賃金期間に生理期を二回迎える婦人労働者は、前記のとおり二九日以内の生理周期の者で一年に一回であるから、名古屋支店の該当女子従業員が従前このような請求を、遠慮して自発的に差し控えていたと考える余地が存する(<証拠>によれば、被告に勤務する女子従業員に対するアンケートの結果によれば、一賃金計算期間中二回の生理期を迎えた者でも、一日をこえる請求をするのは恥かしく、これを差し控えると回答した者が相当数いることが認められる。また昭和三一年一月当時の名古屋支所においては無給の生理休暇でさえ仲々とりにくい状況であつたことは先に認定したとおりである。これらの事実からしても請求自体を差し控えていたと考える余地は多分に存する。)従つて請求した事例が最近において殆んど存しないということから、直ちに労使慣行の成立を即断するわけにはいかない。

してみると、被告主張のような労使慣行が、労使間に定立していたと認めるわけにはいかないから、就業規則の前記条項に関する労使間の統一的解釈が黙示的に定立していたとも、認めるに由ないことになる。

(五)  なお被告と新組合との間の労働協約には、原告主張の労働協約第五七条と同様の条項が存し(右事実については当事者間に争いがない。)、<証拠>によれば、昭和四五年一一月九日右条項は「有給生理休暇、生理日の就業が著しく困難なとき、一賃金計算期間内に一日、生理に際し有給生理休暇の日数を越えて休養を要するときは、無給生理休暇を追加して与える。」旨改訂されたこと、および<証拠>によれば同じ頃の制定にかかる昭和四六年度就業規則中の有給生理休暇の条項は右と同内容のものとなつていることが認められる。

しかしながら<証拠>を総合すると、右労働協約の改訂は控訴会社が従来の慣行の確認、明文化という名目で、原審の審理終結まぎわに、訴訟の結果を有利に導こうとして、従業員の大部分を組合員としている新組合との十分な折衝のないまま通常の改訂時期をはずしてにわかにこれを敢行したものであり、また、就業規則の改訂についても従業員の一部の反対を押切つてそうそうになされたもので、現に右労働協約、就業規則ともその再改訂の申入れが新旧両組合からなされていることが認められるのに徴しても右各改訂の事実だけから従前被告と新旧両組合間に被告主張のような慣行が存したと即断するわけにはいかない。

(六)  なお、控訴会社の従業員の労働組合がこれまでに有給生理休暇二日の要求をしたことがある事実は<証拠>によつて明らかである。しかし、その事実が存するからといつてこれをもつて組合が賃金計算期間と生理周期とのずれによつて各生理周期に確実に一日の有給生理休暇すらとれない結果の生ずることあるを慮り、これを回避する目的に出たもの即ち組合自身に一賃金計算期間内に有給生理休暇は一日限りであるという意識が底にあつたことの証左であるとみるには不十分である。また、被控訴人が一生理周期に一日有給の事例であるとして挙げている京都、岐阜等の事例が暦月一月を一期間とみる目から見ればいずれも暦月一月に一回の事例であるとしても、そもそも控訴会社の賃金計算期間は暦月の一日から月末までではなく、前月の一九日から当月の一八日までであるからこそ控訴会社からいえば右の各事例が例外的事例視されるのであつて、かりに暦月一月に一回一日しか有給生理休暇をとらなかつたとしても、これをもつて控訴会社の従業員に有給生理休暇は一生理期間に一日ではなくて一賃金計算期間に一日であるという規範意識があつたものとする徴表とはなし難い。

五してみると、就業規則第四〇条第五号は、休暇の日数につき一生理周期を単位として一生理期ごとに一日有給生理休暇を与えることを規定したものであることは明らかであるから、原告のその余の主張について判断するまでもなく、被告は原告との労働協約上本件生理休暇についても有給として取扱わなければならないことになる。

六よつて原告が被告に対し、本件各生理休暇減額分たる昭和四三年六月一八日分の一、七八五円、昭和四四年八月一七日分の一、九三一円及び昭和四五年九月一七日分の二、一八四円合計五、九〇〇円ならびに右各金員に対するその支払日の翌日である昭和四三年六月二六日、昭和四四年八月二六日 昭和四五年九月二六日から、いずれもその支払のすむまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める本訴請求はすべて理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、仮執行の宣言につき同法第一九六条を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。

<編注、引用部分おわり>

二よつて、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(岡本元夫 土井俊文 吉田宏)

<編注、理由で引用された原判決事実摘示>

(一) 原告は、被告名古屋支店に勤務する従業員であり、全帝国興信所労働組合に所属する組合員である。

(二) 原告は、昭和四三年六月一七日、昭和四四年八月一六日及び昭和四五年九月一六日、被告に対しそれぞれ生理休暇届を提出し、いずれも生理日で就業が著しく困難なため、右各翌日に生理休暇をとつた。

(三) ところで、被告の従業員に対する賃金は、毎月一九日から翌月一八日までを一賃金計算期間として毎月二五日に支給しているものであるが、被告は、有給生理休暇は一賃金計算期間につき一日であり、原告の前記各生理休暇はこれを越えるものとして、この分を原告の賃金からカットした。すなわち、被告は、右生理休暇の減額分として、原告に対する昭和四三年六月分の賃金から一、七八五円、昭和四四年八月分の賃金から一、九三一円、昭和四五年九月分の賃金から二、一八四円をそれぞれ控除した。

(四)1 しかし、被告の就業規則第四〇条五号は「女子が生理日の就業を著しく困難とするとき、一日の有給生理休暇を与える」旨規定している。

また、被告と原告所属の労働組合との間で締結された労働協約第五七条も、右と同趣旨の規定が存在していた。もつとも、同協約は昭和三八年七月一八日以降失効(但し、その後規範的条項に関し効力の存続を認める協定をしたが、昭和四〇年二月二八日以降無協約状態となる。)しているけれども、この有効期間中に原告の労働協約が成立した以上、右協約第五七条は、労働協約の直律強行性からも、当然、原告の労働協約の内容として存続している。労働協約が外部から労働協約を規制するものと解されるときは、当事者の合意によつて労働協約に内容化されている。

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